第3 当裁判所の判断
1 旧αにおける法定の告示の存否について
当裁判所も,本件各協議について,法定の告示が必要であったにもかかわら ず,旧αにおいてその告示を欠いたものと判断する。
その理由は,原判決の事 実及び理由欄の「第3 当裁判所の判断」の1に記載されたとおりであるから, これを引用する。
2 法定の告示を欠く本件在任特例協議の効力について
(1) 市町村の合併に伴い新たに市町村(合併市町村)が設置される新設合併 の場合,廃止されることになる合併関係市町村の各議会の議員はその合併と 同時に議員としての身分を失い,合併市町村の設置の日から50日以内に当 該市町村の議会議員の一般選挙(設置選挙)が行われるのを原則とするとこ ろ(公職選挙法33条3項,117条参照),旧合併特例法7条1項は,こ の例外的措置として,合併関係市町村の議会の議員で当該合併市町村の議会 議員の被選挙権を有することとなるものは,合併関係市町村の議会の議決を 経た協議により,合併後2年を超えない範囲で当該協議で定める期間に限り, 引き続き合併市町村の議会の議員として在任することができる旨の,いわゆ る在任特例を規定している(なお,市町村の合併の特例等に関する法律(平 成16年法律第59号)9条参照)。
被請求者らは,この在任特例の規定に 基づいてされた本件在任特例協議により,本件合併後から平成18年11月 25日まで,引き続いて青森市の市議会議員として在任することができるこ とになったものである。
しかるところ,本件在任特例協議については,前記 のとおり,旧αにおいて在任特例協議について定める旧合併特例法7条4項 において準用する同法6条8項の告示を欠いており,告示を欠く本件在任特 例協議が有効であるか否かが争われている。
(2) ところで,旧合併特例法は,市町村行政の広域化の要請に対処し,自主 的な市町村の合併を推進し,あわせて合併市町村の建設に資するために市町 村の合併について関係法律の特例その他必要な措置を定めるものであって (同法1条),地方自治法の定めを緩和する例外的措置となるものである。
本件で問題になっている議員の在任特例もその例外的措置の一つであるとこ ろ,在任特例は,合併後の市町村建設計画をより適切に実行するため,合併 に関係した合併関係市町村の議会の議員に引き続き一定期間議員の地位を保 障し,その意見を市町村建設計画の実施に反映させる趣旨で設けられたもの と解される。
そして,在任特例の規定である旧合併特例法7条4項が準用する同法6条 8項は,協議が成立したときは直ちにその内容を告示しなければならない旨 を規定しているのであるが,この規定には,同じく合併に関する規定である 地方自治法7条7項のように「告示によりその効力を生ずる」との文言やこ れに類する文言はない。
また,条例や規則は,公布によってその効力を生ず るものであるが,在任特例は合併関係市町村の議員の在任期間を上記の趣旨 で一時的に延長するものにすぎず,市町村民に新たな義務や負担を課すよう な法規的な性質を有するものではないから,条例や規則に準じた扱いをすべ きものとはいえない。
なるほど,在任特例協議がされることによって合併後 50日以内に行われるのを原則とする設置選挙が行われないという意味で, 関係住民の選挙権,被選挙権が制約されるという面があることは否定し得な いとしても,そのような制約は,市町村の合併を推進するために旧合併特例 法が特に許容したところであって,合併関係市町村の住民も在任特例協議の 内容に不服を申し立てることはできない。
在任特例協議によって合併後最初 に行われる選挙の時期が決まる結果になるにしても,選挙そのものは在任特 例協議によって行われるものでもない。
そうしてみると,合併特例法6条8項の趣旨は,同項に定める告示をもっ て,議員定数特例協議や在任特例協議の効力発生要件にしたものではなく, これらの協議で定められた事項を広く住民に周知させる事実行為と位置付け ているものと解するのが相当であり,したがって,同項に定める告示を欠い た場合においてもそのことによって当然に無効ということはできない。
(3) もっとも,告示が在任特例協議の効力発生要件ではないといっても,在 任特例協議に関する手続であって,告示を欠くことはその手続上の瑕疵であ ることは明らかであるところ,手続上の瑕疵が重大かつ明白であって,在任 特例協議自体を無効とせざるを得ない場合もあり得るから,この点について 検討するに,在任特例協議は,新設合併においては市町村の合併後2年を超 えない範囲内という期間に限り,既に合併関係市町村の議員として選挙にお いて選出され民意の信託を受けた者で,かつ,合併市町村においても議会の 議員となる資格を有する者について,引き続いて合併市町村の議会の議員の 地位を付与するというものであって,合併がなければ議員の資格を有した者 に対する一時的な例外措置であり,合併関係市町村の議会の議決を経て行わ れるものである。
そして,合併関係市町村の議会の議決を経た上で協議が整 った以上,その時点で協議自体は有効に成立したものというべきであり,告 示は,協議の内容を合併関係市町村の住民に広く周知させる事後的行為にす ぎないものというべきである。
そうである以上,在任特例協議において告示 を欠いたとしても,そのことは,遡って協議自体に無効を来すような重大な 手続的瑕疵になるものとはいえない。

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